相続税申告のご依頼を受けた時は、参考資料として亡くなった方や相続人の方の確定申告書を数年分お預かりしています。 本来は相続税の申告のためですが、確定申告書を確認させていただく中で、税金の納め過ぎが見つかって、亡くなった方やその相続人の方が納め過ぎた税金を戻してもらうお手伝いをすることが時々あります。 今回はそのいくつかの例を御紹介しましょう
1. 車の減価償却費が必要経費として認められ、生前5年間の所得税が還付されたケース
依頼人の御自宅を訪問したときに、ガレージにいわゆる高級車ありました。遺族である奥様曰く「亡くなった主人の車で今は誰も乗っていない」とのこと。
「でもこの車、御主人の確定申告書にあがってないですね?」
「ええ、車は営業車だけが経費になると思っていたので」
「御主人は仕事でこの車を使ってなかったのですか?」
「いいえ、使っていました。」
事業で経費に入れていたのは従業員用の車のみ、事業主である御主人が使っていた車は経費に入れていなかったのです。御主人の事業内容や実際の使用状況を確認の上、手続きをして過去に納めた5年分の所得税が一部戻ってきました。車の価額の半分が必要経費として認められ、100万円に近い税金が戻ってきたのです。
2. 扶養控除の適用で所得税が還付されたケース
亡くなった御主人の準確定申告書には二人のご子息が扶養親族として申告されてありました。ところが、その年の奥さんの確定申告書には扶養親族の記載はありません。
「奥様はお子さんたちを扶養親族として申告されなかったのですか?」
「はい子供はいつも主人の扶養にいれていますので」
通常子供の扶養控除は夫婦どちらかで受けるものですが、御主人が亡くなった年は、御主人の準確定申告と、奥さんの確定申告の両方で控除を受けることができます。 奥さんの所得税の更正の請求をして、税金が戻ってきました。
3. 遺族が負担した医療費で所得税が還付されたケース
お預かりした資料の中に医療費の領収証が入っていました。入院中に亡くなったお父様の医療費で、亡くなった時に未払いになっているものは、お父様の債務として、相続財産からマイナスして相続税を計算します。
「この入院費用は誰が支払ったのですか?」
「長男の私です」
「医療費控除は受けられましたか?」
「相続の申告で使うからだめだと思っていました」
相続財産から債務控除した医療費でも要件を満たせば実際に負担した御長男が医療費控除を受けることができます。 この方は他にも医療費の支払いがあり、既に確定申告で医療費控除を受けていましたが、追加の医療費控除を受ける手続きをして、所得税が還付されました。
このように税金を払い過ぎた場合でも、一定の手続きを踏めば戻ってくる可能性はあります。一方最初に申告しておかなければ後からはやり直しがきかないものもあるのです。その話はまた次回に御紹介致しましょう。