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被相続人の自宅を配偶者が相続する場合の特例の注意点(特定居住用宅地等)

2020.09.20

 被相続人(例えば、ご主人様)がご自身で住まれていた自宅を配偶者の方(例えば、奥様)が相続された場合は、無条件でその宅地等について100坪(330㎡)まで相続税評価額を80%圧縮できる特例をうけることができます。

 今回は、被相続人の居住用不動産を配偶者が相続する場合にフォーカスして、特例適用の際の注意点や疑問点を解説していきたいと思います。

 

1. 小規模宅地等の特例を適用する際の注意点

 

ケース1】 被相続人の居住の用に供していた場合とは?

 

この居住用の判定は、形式的に住民票だけで判断するものではなく、実際に居住していた事が重要となります。

したがって、実際に住んでいる場所と住民票上の住所が異なる場合は、注意が必要です。

国税庁の質疑応答事例をもとにすると下記が判定の要素となるものとなります。

 

   ①日常の生活の状況

   ②その家屋への入居目的

   ③その家屋の構造及び設備の状況

   ④その他の事情を「総合勘案」

 

このように、「居住の用」とは実は条文上明文規定はないものとなり、専ら解釈に委ねられることになりますが、要約すると被相続人の「生活の拠点」であったことと解されています。

 

したがって、この特例の適用を受けるために一時的に入居した場合などは適用対象外となりますので、実際に住んでいた事実が重要となってきます。

 

なお、相続開始直前に老人ホーム等に入居していた場合も被相続人が要介護認定等を受けている等の要件を満たせば適用可能となりますが、本稿では詳細な要件は割愛させていただきます。

 

ケース2】 申告期限までに分割できていない場合は?

申告期限までに遺産分割がまとまらず、未分割の場合となっている場合は原則として小規模宅地の特例は適用できません。

 

しかし、「申告期限後3年以内の分割見込書」というものを相続税の申告書と一緒に提出すれば、いったん特例は使えなくとも申告期限から3年以内に分割された場合は適用可能です。

 

特例を適用することにより相続税が減額するときは、分割のあった日の翌日から4ヶ月以内に限り更正の請求を行えば税金が還付されることになります。

 

仮に、相続税の申告期限から3年以内に分割ができなかったことにつき、やむを得ない事情がある場合には、申告期限から3年経過日から2ヶ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して所轄税務署長の承認を受けていればこの特例を適用することができます。

 

 

ケース3】 相続税申告期限(相続開始後10ヶ月以内)までに売却した場合は?

小規模宅地等の特例を適用するにあたり、原則としてその対象となる宅地等を相続税の申告期限まで所有しておかなければなりません(一定の場合は居住要件もあります)。

 

しかし、配偶者には申告期限までの所有要件はありませんので、申告期限内(相続開始後10ヶ月以内)に不動産の売却を行っても特例の適用が可能となります。

 

したがって、配偶者の方が相続開始後10ヶ月以内にご自宅を売却して老人ホームに入居する場合や、子供の家に引っ越す場合なども本特例の適用対象となります。

 

2. まとめ

被相続人のご自宅を配偶者が相続した場合は、原則無条件で小規模宅地等の特例を受けることができ、相続税額を大きく圧縮できることになりますが、居住の用に供するとはどのような状態なのかなど判断に迷う場面は多くあります。

 

小規模宅地等の特例を適用する場合は思わぬ落とし穴があるので、必ず専門家へご相談いただければと思います。

 

筆者紹介

税理士法人 アーリークロス 副代表 相続・承継支援部長
小山 寛史

学歴 関西大学卒業 西南学院大学大学院卒業

国内最大手税理士法人にて資産税、事業承継案件を経験した後、国内中堅税理士法人にて資産税、事業承継、法人顧問など幅広く業務を経験。 税金面のアドバイスはもちろんのこと、クライアントの「想い」に寄り添った提案を心がけている。 特に不動産オーナーの相続対策については、「評価額圧縮」「遺産分割対策」「納税資金対策」「生前贈与対策」の4つの柱を軸に円満な相続ができるよう偏りのない総合的なアドバイスを行っている。 不動産オーナー向けのセミナーも多数開催。

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