先日、かつての同僚が晴れて税理士になったので、お祝いとして職印(仕事で使う印鑑)を作りに行きました。
弁護士や司法書士と違って、税理士の場合は職印の登録は不要ですので適当な印鑑を使っていても問題はないですし、最近だと電子申告や電子契約書が増えて印鑑を押す機会も少ないのですが、個人的に印鑑が好きなのでよくプレゼントしています。
「折角なのでいい印鑑をプレゼントしよう!」と思ってお店の人に「象牙はありませんか?」と尋ねたところ、「ゾウの保護のために象牙の印鑑は作れなくなりました。」とのことでした。2019年に私が税理士になった時には象牙で実印を作れたので、ここ何年かで情勢がガラッと変わってしまったようです。
そういえば、相続の現場で象牙を見るケースがあります。1つは相続財産として象牙そのものが保管されているケースです。もう1つは、「象牙の実印だけど、故人の物でもう使用できないんですが、どうしたらいいですか?」というケースです。
象牙そのものについては、質屋あたりで鑑定してもらって相続税を計算します。数社鑑定に出して、一番安い額で申告するのがポイントです。私が直近で見たのは10年程前ですが、2桁万円くらいの価値がついていたような記憶があります。ただ、現在の象牙買取サイトを見ると、3桁万円が多いようです。また、注意点として、牙そのものであれば登録が必要になります。登録先は、一般財団法人自然環境研究センターというところです。相続により取得した場合は、相続人が新たな取得者として登録する必要があります。登録しないことに対する刑罰はありませんが、未登録の象牙を売買した場合には刑罰があります。相続した後に税金を納めるために売却する場合などは要注意です。
象牙の印鑑については彫り直しができるので、相続人やまだ実印を作っていない親類に渡して印面を作り直して有効活用していただければと思います。彫り直し費用は15,000円前後で、現在購入できる牛の角の印鑑を買うのと同じくらいの金額です。彫り直すと数cm短くなりますが普通に使えますし、象牙は新規購入ができないので貴重です。
象牙買取サイトを見ると、象牙の印鑑1本あたり数千円で買い取りされているようです。象牙の印鑑が普通に買えていた頃の価格が1本数万円だったので、材料費が数千円+彫る人件費15,000円といったところだと思います。
個人的にはたかだか数千円であれば、持っておいた方がいいと思います。新規の象牙が市場に出回ることは今後ないからです。ちなみに、印鑑は牙そのものではない加工品なので、登録は不要です。
余談ですが、象牙は採取する箇所によって価値が違います。
マグロで言うと、赤身・中トロ・大トロといった感じです。象牙は芯が一番高価で、周りに行くほど安くなります。芯に近いほど固く、朱肉のノリが良いとされています。別格として、横目日輪というものがあります。通常は牙が生えている方向に縦に材料を取るのですが、横目日輪は芯の部分を横に取ります。こうすると木の年輪にように同心円の模様ができ、太陽(日輪)のように見えるのでこう呼ばれます。1本の象牙から少ししか取れず、他の取れる部分にムダができるため高価になります。
デメリットとして、牙を突く方向に対し垂直になるため、構造上脆いそうです。
もしご家族で象牙の印鑑をお持ちの方がいらっしゃれば、印鑑を肴に話が弾むかもしれません。
ついでに「象牙は今値上がりしとているみたいよ」と言って相続対策などの話などもされてはいかがでしょうか。