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⽣命保険の受取⼈が孫になっている場合の注意点

2023.05.20

はじめに

⽣命保険の⾮課税枠が相続⼈⼀⼈につき500万円あるのは周知の通りです。
この⾮課税枠が使えるのは受取⼈が相続⼈のみの場合です。
それではこの保険⾦の受取⼈が孫だった場合はどのようなことが起こるのでしょうか︖
結論から⾔うと「税務上の観点から」は、 ⽣命保険の受取⼈に孫は設定しない ことが鉄則です。
なぜなら税務上不利益になることが多いためです。
この記事では孫が⽣命保険の受取⼈になった場合の相続税の課税関係について解説したいと思います。

⽣命保険の⾮課税枠

⽣命保険の⾮課税枠は相続⼈⼀⼈当たり500万円となっています。
これはその通りなのですが、あくまで「相続⼈」に限られます。
従いまして、法定相続⼈ではない孫が⽣命保険の受取⼈になっている場合は当然⽣命保険の⾮課税枠はありません
それでは孫が養⼦になっている場合はどうでしょうか︖
この場合、⺠法上は孫養⼦も相続⼈となりますので⾮課税枠は使えますので孫養⼦の分だけ⾮課税枠が増えることになります。
ただし、被相続⼈に実⼦がいる場合は何⼈孫養⼦をとっても⾮課税枠は⼀⼈分の500万円しか増えません ので注意が必要です。

相続税の2割加算

相続税は相続⼈以外の⽅が相続により財産を取得した場合にも、その取得した⼈に対して相続税がかかることになります。
さらに財産を取得した⼈が⼀親等の⾎族、配偶者でない場合については、相続税が20%増額されることになります。
従って、代襲相続⼈でない孫が⽣命保険の受取⼈となっている場合は当然孫も相続税を⽀払うことになりますが、孫は本来の相続⼈ではないので相続税が20%増しとなります。
ちなみに孫を養⼦にしている場合でも相続税の2割加算がありますので注意が必要です。
※代襲相続⼈である孫は相続税の2割加算はありません。

⽣前贈与加算の対象

相続⼈が⽣前に贈与を受けた場合は、執筆時点(R5年)では相続開始前3年以内の贈与は相続財産として計上しなければなりません。
このいわゆる⽣前贈与加算は「相続により財産を取得した⼈」にのみ限定されています。
つまり、通常であれば孫は相続で財産をもらうことはありませんのでこの⽣前贈与加算の対象とはなりません。
しかし、⽣命保険の受取⼈に孫がなっている場合は相続により財産を取得しているとみなされますのでせっかく今までした贈与も⽣前贈与加算の対象となり思わぬ相続税がかかることになります。

⽣前贈与加算に関わるR5年度税制改正の内容

⽣前贈与加算については、R5年度税制改正によりこの期間が7年間となることになりました。
ただし、R6年以降にした贈与に関わるものなので実際に影響が出始めるのはR9年1⽉以降の相続となります。

したがって、⽣前贈与加算の対象期間が伸びることになってますので⽣前贈与加算の対象外である孫に対する⽣前贈与はますます重要となってきます。

おわりに

本記事では⽣命保険の受取⼈に孫を設定してしまった場合の相続税の課税関係についてまとめました。
⾮課税枠が増えるわけでもなく、相続税の2割加算の対象となり、なおかつ⽣前贈与加算の対象(しかも7年に伸びる)となりますので税務的に⾒ると決して良いことはないでしょう。

しかし、前記はあくまでも「税務上の観点」で述べたものです。
元々相続税が掛からない⽅や、節税以外の⽬的がある⽅の場合は、孫を保険⾦受取⼈に設定することも有りでしょう。
この機会に⽣命保険の受取⼈の確認を⾏い、保険の⾒直しを検討されてはいかがでしょうか。

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筆者紹介

税理士法人 アーリークロス 副代表 相続・承継支援部長
小山 寛史

学歴 関西大学卒業 西南学院大学大学院卒業

国内最大手税理士法人にて資産税、事業承継案件を経験した後、国内中堅税理士法人にて資産税、事業承継、法人顧問など幅広く業務を経験。 税金面のアドバイスはもちろんのこと、クライアントの「想い」に寄り添った提案を心がけている。 特に不動産オーナーの相続対策については、「評価額圧縮」「遺産分割対策」「納税資金対策」「生前贈与対策」の4つの柱を軸に円満な相続ができるよう偏りのない総合的なアドバイスを行っている。 不動産オーナー向けのセミナーも多数開催。

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